雪が好き

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 昔から雪が好きだった。雪が降るとなんだか嬉しくて、意味なく外を歩き回ってしまう。

 いつも見慣れた景色が、別の世界になるような感覚が好きなのだ。非日常感が好きなのだ。うっかりすると、毎日が同じように過ぎていってしまう中で、雪の日は特別な非日常なのだ。毎日が空虚で同じものではないと思わせてくれる。だから雪が好きだ。

 

 雪が珍しくもない北国のヒトにはきっとわかってもらえないだろう。実際、けっこう呆れられたりする。なにが楽しんだか、と。

 

 音が雪に吸収されて世界が静まりかえるのも、また魅力的だ。この静寂は普段存在しない。静かで清潔に澄んで、キリリと寒い別世界。明日には失われてしまう別の世界。

 

 雪の降り積もる公園に寝転んで空を見上げる。昔からなんとなくやってしまう。灰色の空から降ってくる雪を見つめながら、背中から伝わってくる冷気に浸っていると、自分が地面になったような気がしてくる。なにもかも忘れて地面になるのだ。煩わしいあれこれも、みんな関係のないことのように遠くなっていく。雪は降り積もる。静かに。

 

 雪が好きなのだ。子どもっぽいと言われても。