呪われし包丁の話し

 

その包丁はたぶん血に飢えている。自宅に包丁は数本あるのだが、私を傷つけて血を流させるのはその一本だけ。普段から使用頻度の高い一本というわけではない。時々登場しては、私を傷つける。痛みを覚えて、あらためて実行犯を確認すると、いつもアイツだ。

 

これはもう呪われているのかもしれない。いや、魂が宿っているのかもしれない。九十九神というやつだろうか。しかし、荒ぶるには年月が経っていないことが、若干気になるといえば気になる。

 

今日もアイツのせいで指を切った。けっこう深々と。綺麗な切り口からは血が溢れだし、一向に止まる気配がない。だんだんと鈍い痛みが存在感を主張し始め、何らかの処置をせずにはいられなくなる。

 

面倒くさい。染みるし。絆創膏は微妙に締め付けをしてきて、妙な束縛のようで鬱陶しい。忌々しい包丁め。

 

と思っていると、きっとまた私の肌に刃を立ててくるのだろう。

嫌な包丁だ。本当に。