ビールが屏風に上手にビールの絵を描いた、あービアビア

 

 想像してみてください。

 脂の乗った鮮やかな色味の鯵の握りを、深い色合いをした少量の醤油につけて、上に乗った薬味のネギ、生姜と一緒に口の中でゆっくり噛み締める。醤油の風味と塩気を感じると同時に、口中に広がる力強い旨味とネギと生姜の香り。すべての香味が渾然一体となって鼻へ抜けていく至高の瞬間。

 そして、おもむろに、たっぷりの泡で香りを封じてある金色の冷たいビールを、静かに、ゆっくりと喉へと流しこみ、「ふぅ」と軽く息を吐き出す。

 

 生臭い。

 

 前から思っていたんだけどビールは魚に合わない。特に生魚。寿司屋でビールが当然のように置いてあって、みなさん美味しそうに飲んでいらっしゃいますが、人生に対して誠実であろうとするならば、ぶっちゃけ合いませんよね?ほら、正直に言っちゃってみてくださいよ、ほら。魚の生臭さ180%増しですよね?寿司の魅力ぶち壊しですよね?

 

 これは、焼き魚、煮魚、蒸し魚、揚げ魚、炒め魚、茹で魚、干し魚、冷し魚、漬け魚、練り魚、あと魚肉ソーセージ。ありとあらゆる魚に合わない。なのになぜ正直に言わないのだ、ビールは魚に合わないと。それどころか、魚を出す料理屋には必ずビールが…はっ!!さてはビール会社と政府による陰謀だな!?謀略だな!?酒税と関係があるな!?大衆を酔っ払わせておいて何かする気だな!?改憲か!?増税か!?いやーん!

 

 あ、誤解があるといけないんで断っておくと、ワタシはビール好きです。「苦いからビールは苦手なんですよねぇ、サワーとかなら飲めますけどぉ」とか言う新歓コンパで初めて酒を飲むような味覚の幼稚な成り立て大学生は、「ビールの苦味は人生の苦味っ!飲み込め!飲み干せっ!」っとグーでチカラのかぎりいっちゃいたい派です。あ、麦芽は100%でお願いします。

 

 ビールって脂っぽいもの、例えばポテチみたいなものにしか合わない気がします。もっと乱暴な持論を展開しちゃうジロンド派としては、そもそもビールは料理に合わないんじゃないかと。ねぇ、ジャコバン派のみなさん。あ、怒った?もっぱらワタシは、ビールはビールだけで飲みます。飲むとお腹が空くのですが、食べると合わない。困ったもんです。ビール好きなんですけどねぇ、ビール。あービール飲みてぇ。そういや、ドイツ方面的なビアホールとかで、一杯1000円近い値段がしたりするのが納得いかなかったりします。美味しいけどね。だってたくさん飲めないじゃん。チェコビールも美味しいよね。そうそうイギリスは街単位ぐらいで醸造所があって、地ビールがたくさん存在していたわ。カルチャーですな。

 

 あー話がそれた。まぁ、ビールはとにかく魚に合わないってことですよ。ん?じゃあ魚には何が合うのかって?んーやっぱり日本酒か焼酎ですかね。おっさん臭い?いや、おっさんの方が食い物の味を知ってるってことなんじゃないですかねぇ。味覚は経験によって創られる。ジークジオン!