自浄作用の死

間違った方向に進んでいることがわかったら、どこで間違えたのか確認してやり直すことが必要だ。

 
しかし、得てして「戻る」ということは嫌われる。提言しようものなら手酷く拒絶され、下手をすれば裏切り者扱いをされる。
 
それまでにかけてきた時間や手間を否定されると感じるからだ。重症になると、関わったヒトの人格を否定していると受け取ることもある。
 
提言を受けた「戻る」「やり直す」を認められないヒトたちがどうすかというと、とにかく前進を主張するようになる。
 
もはやその先に正解がないと推測されるにも関わらず、前進することでしか自分たちを肯定できなくなってしまうのだ。
 
間違っているため事態は更に悪化をしていく。一向に好転しない状況にフラストレーションを溜め込み始めた集団は、しだいに生贄を必要としだす。
 
ガス抜きと責任転嫁のために魔女狩りを始めるのだ。当然標的は「戻る」を提言した人物だ。ネガティブな言説で集団の士気を下げた、今更そんなこと言うな、コミットできないなら去れ、などなど、熱狂的にバッシングする理由には事欠かない。
 
こうして言説は封じられ、集団の自浄作用は失われる。真剣に危機感を抱いたものは排除される。
 
正義感や責任感に突き動かされても、スタンドプレーに出るかどうかはよく考えたほうがいい。賭けに出るだけの価値のある集団なのか。