正義の味方に告ぐ!

時々、中高生たちとすれ違った時、彼らにあることを伝えておきたい衝動にかられることがある。それはもう、ゆさぶられっこ症候群よろしく、肩をガシガシやって首がガクンガクンいうぐらい言って聞かせたい。可能であれば、当時の自分に言って聞かせたい。

 

世の中は「善」「悪」で別けられていないし、そうした対立構造ですらない。

 

言葉にしてしまうと、すごくつまらない。しかし、こいつは重要なことだ。

 

あなたの信じている正しいこと。

あなたの信じている正義。

あなたの信じている善。

それっていったい何なのだろうか。

 

思うに善悪とは、倫理・道徳・社会通念によって何となく決まっている、流動的な定義の危ういモノなのではないだろうか。善悪とは絶対的な価値観ではなく感情なのだ。あなたを突き動かしている正義感は、万人が共有している唯一解の絶対的な価値観ではなく、ただの感情なのだ。立場が変われば、見方が変われば、それは簡単に正義ではなくなる。

 

身近な例として戦隊モノをあげよう(それって身近なのか…)

なんとか戦隊なんとかジャーの5人組(変動あり)は善。宇宙系か古代文明系の方々は悪。ご存知のように、だいたいはそっち系の方々が地球を支配しようとするわけよ。はい、ここで問題。なんで地球を支配しようとするアレな方々は悪なのか?別に地球を支配したっていいでしょう。アレな方々にも崇高な理念があって、彼らの正義に従って行動しているのではないか?彼らにしてみれば自分たちが正義なわけだ。なんとか戦隊なんとかジャーは、自分たちの善行を妨害する悪の5人組(変動あり)でしかない。

 

で、何を言いたいかというと、自分が信じる正義を万人が信じる正義だと思って行動してはいけない。っということだ。あなたの正義は誰かの悪かもしれない。先の戦隊モノで言えば、なんとかジャーもアレな方々の組織も、善にもなり得るし、悪にもなり得る。そしてもっと重要なことは、冒頭にも述べたように、世の中は善と悪とで構成されているわけではないということだ。

 

本当は地球がアレな方々の組織に支配された方がなにかと都合がよいのだけれど、そんなコト言ったらなにされるかわからないから、なんとかジャーについておこう。っというヒトもいる。本当は地球の支配なんてめんどーなんでやりたくもないのだけれど、そんなコト言ったらなにされるかわからないから、アレな方々の組織に従っておこう。っというヒトもいる。どっちにも興味がないので勝手にやってくれ。っというヒトもいる。どっちの言ってることもよくわからないので、どーしたらいいのかわかりません。っというヒトもいる。両者でチカラをあわせて火星を侵略したらいいんじゃないのか。っというヒトもいいる。現実世界の価値観はすこぶるグレーなのだ。こういうヒトたちにとって「地球を守ろう!」というイデオロギーは別に正義でもなんでもない。「地球を守ろう!」が万人にとって望ましいことであり、万人にとっての正義なのだ!なんて思って気持ちよくなっているのはなんとかジャーだけなのだ。うれションでもしてろ。

 

なにかを成そう、なにかを変えようとするのであれば、正義を拠り所にしてはいけない。誰にとって有益なのかよくわからない正義を振りかざしてはいけないのだ。

 

叩き合い、つぶし合いは正当化なんてできない。

示すべきは正義であることの根拠ではなく、なにを理想とするのかというビジョンだ。

いびつな正義を貫き通すことではなく、いかに共有できるのかだ。

 

正義はただの感情なのだ。好き、嫌い、楽しい、つまらない、これらと同等のモノなのだ。高尚な使命でもないし、崇高な理念でもない。

 

もし、正義は自分にあると思って行動しそうになったら少し考えてほしい。その正義は誰にとっての正義なのかと。オレの正義であるならば、それは独善的だ。みんなの正義であるならば、”みんな”なんてものはいないよ。